アデノウイルス感染症

板橋稲門会 健康セミナー

板橋稲門会会員である窪田公一医師が毎月、健康に関わる様々な情報をお届けします。


アデノウイルス感染症

夏季を迎えて、学校や保育所ではプールの季節となりました。この時期になると、しばしば流行を耳にする感染症があります。一般に「プール熱」とよばれる病気は、「咽頭結膜熱」というアデノウイルスによる感染症です。以前はしばしばプールで感染が拡大したのでこのような呼称が付いていますが、昨今は感染症対策としてプールの水質基準が管理され、タオルの共用なども行われなくなったので、プールでのアウトブレイクはほとんどありません。

子供たちの感染症は季節性のあるものが多く、アデノウイルス感染症は初夏から夏に流行することが多い病気です。しかし近年は、迅速診断キットの普及もあり、夏だけでなく通年で発生していることがわかってきました。コロナ明けの2023~2024年には秋から冬にかけて、例年を遥かに超える大きな流行も観察されました。

咽頭結膜熱

潜伏期間は5日から7日程度。3主症状は発熱、咽頭・扁桃炎、結膜炎で、39℃前後の発熱、のどの痛みや発赤、目の充血や目やになどです。アデノウイルスによって肺炎、嘔吐、下痢を来す急性胃腸炎、急性膀胱炎になることもあります。このようにアデノウイルスによる病態は多彩ですが、抗ウイルス薬はないので、対症療法を行います。

感染力が非常に強いウイルスで、呼吸器や眼の結膜からはウイルスが排出され、「飛沫感染」や「接触感染」します。糞便中にもウイルスが存在し、「糞口感染」も起こります。

アデノウイルスにはアルコール消毒が効きにくいです。石鹸と流水でのこまめな手洗いや手指衛生などを日常から習慣付けることが、感染予防のためには大切です。



咽頭結膜熱は5類感染症定点把握疾患に定められています。学校保健安全法では第二種伝染病に位置付けられており、主要な症状が消褪した後2日を経過するまで出席停止とされています。

参考:日本医師会雑誌
文責:窪田公一

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