つつが虫による感染症
板橋稲門会 健康セミナー
板橋稲門会会員である窪田公一医師が毎月、健康に関わる様々な情報をお届けします。
ツツガムシは、山林、河川敷などの草地、耕作地などに広く分布するダニの一種です。
ツツガムシの幼虫は草の先端で待機して、通過する動物の体表に吸着してその体液を吸うことで若虫に成長します。
ツツガムシ病
細菌の一種であるリケッチアによる感染症で、リケッチアを保有したツツガムシの幼虫に刺されることで感染し、北海道や沖縄を除く全国で発生が見られます。
症状
ツツガムシに刺されてから7~10日ほどして発熱(38~40度)します。
発熱と同時または2~3日後に顔面、体幹、に不規則な紅斑・丘疹性の発疹が現れます。
また、ツツガムシの刺し口が径10mmの黒褐色の痂皮に被われた潰瘍として確認されます。
その他に、頭痛、悪寒、全身倦怠、食欲不振、関節痛、結膜充血、咽頭発赤、下痢、嘔吐などを伴うこともあります。
局所または全身のリンパ節腫脹、肝臓・脾臓の腫大がみられることもあります。
重症例では、播種性血管内凝固による出血傾向、中枢神経症状、肝障害、血圧低下や呼吸器症状も合併することがあります。
診断
ツツガムシ病の主要三徴候、刺し口、発熱、皮疹のうち、刺し口を確認することが大切です。
そして、血液検査でツツガムシ病の抗体の有無を調べます。
さらに、炎症や貧血の程度、肝機能、腎機能など全身状態の把握が必要です。
治療
テトラサイクリン系抗生剤が有効です。
早期に適切な治療が行われれば3日程度で回復しますが、治療が遅れた場合には命を落とす可能性もあります。
予防
ワクチンは開発されていません。
野山や河川敷などにやむを得ず立ち入る場合には、ツツガムシの吸着を避けるために、長袖、長ズボン、手袋など肌の露出を避け、虫除け剤を適宜使用しましょう。
文責:窪田公一