脂肪性の肝疾患
板橋稲門会 健康セミナー
わが国では、肝癌や肝硬変の原因として、飲酒に関連しない、生活習慣の乱れが原因とされる脂肪肝の割合が増加しています。
これまでは、飲酒に関連していないことから「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD1))」と呼ばれていましたが、近年、「アルコール依存症」や「肥満者」のような差別的な表現を避けるため、「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD2))」と名称が変更されました。
診断と検査
MASLDは脂肪肝に加え、5つの心血管代謝危険因子(メタボリック症候群の基準:肥満度、耐糖能、血圧、中性脂肪、HDL-コレステロール)のうち少なくとも1つが合併していると診断されます。
さらにMASLDのうち、週に女性140g、男性210g以上飲酒する場合にはMetALD3))(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)と診断します。
また、血液検査や画像検査、組織検査によって肝臓の硬さを調べ、肝硬変やそれに近い状態だった場合には、食道静脈瘤や肝臓癌の検査も行うことになります。
治療
MASLDは心血管疾患のリスクを高めるなど全身の病気にも関連しているため注意が必要です。
治療には生活習慣の改善が重要であり、過体重の場合にはカロリー制限やフルクトース4)の摂取制限といった食事療法や、有酸素運動・レジスタンス運動5)を行うことで、現在の体重から5~10%の体重減少を目指します。
また、糖尿病や高血圧、脂質異常の適切な管理も不可欠なため、かかりつけ医に相談することが大切です。
1)NAFLD:non-alcoholic fztty liver disease
2)MASLD:metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease
3)MetALD:metabolic alcohol-associated liver disease
4)フルクトース:果糖。糖の一種で果物、蜂蜜、砂糖に含まれている
5)レジスタンス運動:標的とする筋肉に集中して負荷をかける動作を繰り返し行う運動。スクワット、腕立て伏せ、ダンベル体操など。
参考:日本医師会雑誌
文責:窪田公一